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「荒涼とした大自然」:鉄道で巡るヨークシャー・スリーピークスの核心

ヨークシャー・スリーピークスを鉄道とバスで巡る旅。荒涼とした大自然の中、三つの峰をハイキングし、地元のパブで交流する。カーフリー旅行の魅力を伝える。

公開日時: 2026年7月13日 7:09 · 更新: 2026年9月27日 22:48

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鉄道で巡るヨークシャー・スリーピークス:荒涼とした大自然の核心へ

イギリス、ヨークシャー地方。その名を聞いて、多くの日本人が思い浮かべるのは、ヒースに覆われた荒涼とした丘陵、羊がのんびりと草を食む田園風景、そして名物のプディングや紅茶だろう。しかし、この地には「ヨークシャー・スリーピークス(Yorkshire Three Peaks)」と呼ばれる、登山愛好家やハイカーたちを魅了してやまないエリアがある。イングルバラ(Ingleborough、723m)、ウィーンサイド(Whernside、736m)、ペニジェント(Pen-y-ghent、694m)の三つの峰を擁するこの地域は、イギリスでも有数のトレッキングスポットだ。

今回、私は車を使わずに、鉄道とバスを乗り継いでこの地を訪れた。目的地は、三つの峰に囲まれた小さな町、リボン(Ribbon)だ。ロンドンのキングス・クロス駅から出発し、ヨークで乗り換え、さらにリーズを経由して、一路北へ。車窓からは、次第に街並みが消え、緑豊かな丘陵地帯が広がっていく。イギリスの鉄道旅の醍醐味は、何と言ってもこの景色の変化を楽しめることだ。

リボンに到着すると、駅舎はこぢんまりとしており、まるでタイムスリップしたかのような趣がある。駅前にはパブが一軒と、小さな雑貨店があるだけ。まさに「田舎の駅」の風情だ。しかし、この町はヨークシャー・スリーピークスを巡るハイキングの拠点として、多くの旅行者で賑わっている。宿泊先は、事前に予約しておいたB&B(Bed and Breakfast、民宿)に決めた。イギリスならではの、温かいもてなしと、ボリューム満点の朝食が楽しめる。

翌朝、早速ハイキングに出発。まずはペニジェントを目指す。登山道は整備されているが、ところどころぬかるんでおり、特に雨の後は注意が必要だ。標高はそれほど高くないが、イギリスの山は日本のように樹林帯が少なく、視界が開けているため、風の影響を受けやすい。天気は変わりやすく、晴れていたかと思えば、突然霧が立ち込めることもある。そのため、防寒着やレインウェアは必須だ。

頂上に立つと、360度の大パノラマが広がる。眼下には、点在する羊たちと、石垣で区切られた緑の牧草地。遠くには、同じくスリーピークスの一つであるイングルバラやウィーンサイドのシルエットが見える。この景色を見ると、なぜこの地が「荒涼とした大自然」と形容されるのか、その理由がよくわかる。人工物が極限まで排除された、まさに原初の風景だ。

ハイキングの後は、町に戻ってパブで一杯やるのが、イギリス流の楽しみ方。地元のエール(ビール)を飲みながら、今日の山行を振り返る。イギリスのパブは、地域のコミュニティの中心であり、旅人と地元民が自然に交流できる場所だ。私が訪れたパブでは、地元の農家が「今日は羊の移動をしたんだ」と話しかけてきて、思わず会話が弾んだ。

翌日は、バスを利用してイングルバラとウィーンサイドを巡る。バスの本数は多くないが、事前に時刻表を確認しておけば問題ない。イングルバラは、その特異な山容から「ヨークシャーのマッターホルン」とも呼ばれ、登りごたえがある。頂上には、かつて砦があった跡が残っており、歴史のロマンを感じさせる。

一方、ウィーンサイドは三つの峰の中で最も標高が高いが、なだらかな稜線が続くため、比較的歩きやすい。山頂からは、リボン・ヘッド(Ribblehead)の高架橋や、広大な湿地帯を見渡すことができる。この高架橋は、19世紀に建設された鉄道橋で、現在も現役。蒸気機関車が走る姿は、まさにノスタルジーを誘う。

今回の旅で特筆すべきは、公共交通機関を駆使することで、環境負荷を抑えつつ、この地の魅力を存分に味わえたことだ。イギリスでは、近年「カーフリー(車なし)」の旅行が注目されており、鉄道やバスのネットワークも充実している。特にヨークシャー・デイルズ国立公園内では、観光客向けのバス「デイルズバス(DalesBus)」が運行されており、主要な観光地を結んでいる。

旅の最後に、私はもう一度ペニジェントに登り、夕日を眺めた。日が沈むにつれて、空はオレンジから紫へと変わり、三つの峰がシルエットとなって浮かび上がる。その美しさは、筆舌に尽くしがたい。ヨークシャー・スリーピークスは、決して楽な旅ではない。しかし、その苦労を乗り越えた先にある景色は、一生の思い出になることだろう。

もしあなたがイギリス旅行を計画しているなら、ぜひこの地を訪れてみてほしい。電車とバスさえあれば、誰でもこの「荒涼とした大自然」の核心に触れることができるのだから。

唐

唐澤 あきら

Full stack 技術者

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