核融合スタートアップPacific Fusion、商用化の鍵を握る新型装置に着工
核融合スタートアップPacific Fusionが米ニューメキシコ州に実証施設を着工。施設自体を動かすエネルギーを生み出せるか、商用化への大きな試金石となる。
公開日時: 2026年8月26日 7:03 · 更新: 2026年9月27日 22:48
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ニューメキシコに実証施設着工
核融合エネルギーを目指すスタートアップ、Pacific Fusionがこのほど、米ニューメキシコ州に実証施設の建設を開始した。同社によれば、この施設は理論上、施設自体を動かすのに十分なエネルギーを生み出すことが可能だという。核融合発電の商用化に向けた大きな一歩となる。
ニューメキシコ州は、ロスアラモス国立研究所やサンディア国立研究所など、核融合・プラズマ研究の伝統的な拠点がある場所として知られる。Pacific Fusionがこの地を選んだ背景には、研究インフラや人材の集積があるとみられる。
パルスパワー方式で核融合を実現
同社が開発しているのは、パルスパワー方式と呼ばれるアプローチだ。これは、高電圧のパルスを燃料に照射し、一瞬のうちに極めて高いエネルギー状態を作り出して核融合反応を起こす方法。従来のトカマク型(磁場閉じ込め方式)とは異なり、レーザー核融合に似た慣性閉じ込め方式の一種だが、レーザーではなく電気パルスを使うのが特徴だ。
Pacific Fusionが目指すのは、投入したエネルギー以上のエネルギーを核融合反応で生み出す「科学利得」の達成だ。そして今回の実証施設では、その一歩先として、発電したエネルギーで施設自体を賄うことを目標に掲げている。いわば「自給自足」の実証であり、これが実現すれば、発電所としての現実性が大きく前進することになる。
「自分で自分を動かす」エネルギー
核融合発電の最大のハードルは、反応を持続させると同時に、投入エネルギーを上回るエネルギーを取り出すことにある。これまで多くの実験装置は、反応に使うエネルギーが生み出すエネルギーを上回ることはなかった。だがPacific Fusionは、パルスパワー技術を高度化することで、この壁を破れると主張している。
同社の装置は、コンデンサに蓄えた電気を瞬時に放電する仕組みで、巨大な電気パルスを発生させる。このパルスが燃料カプセルを圧縮し、超高温・超高密度の状態を作り出す。この方式は、大型レーザー設備に比べて装置をコンパクトにでき、コストも抑えられる可能性がある。日本の読者には、核融合研究で有名な大阪大学の激光X号や、国立研究所の実験を思い浮かべると分かりやすいかもしれない。
商用化への道のり
とはいえ、商用化にはまだ課題が多い。核融合反応を安定して繰り返し発生させる技術、耐久性のある炉壁材料の開発、そして経済的なコストの実現などが挙げられる。Pacific Fusionは今回の実証施設で、こうした課題のうち技術的な実証を進める考えだ。
同社は今後、施設の建設を進めつつ、装置の性能を段階的に引き上げる計画。2020年代後半には、科学的な利得(投入エネルギーを上回るエネルギー生成)を達成し、2030年代にはパイロットプラントの運転を目指す。
核融合は「夢のエネルギー」と呼ばれて久しいが、近年は民間企業の参入が相次ぎ、実用化への期待が再び高まっている。Pacific Fusionの試みは、その中でも特に野心的なプロジェクトの一つと言えるだろう。今回の着工が、2050年頃とされる核融合発電の実用化に向けた大きな一里塚となるのか、今後も注目が集まる。
Full stack 技術者